第ニ部 第五章


「キャア落っこちゃう!と思ったら次の瞬間、見渡すかぎりの草原に居たの」

「僕と同じだ。じゃあ釧路湿原に着いたんだ」

「うん、クシロ。リョウジさんがそう言ってた」

「エッ、亮司さん?どっ、どうして、、」

「ゴーッって音のする方へ歩いて行ったら、ジロー兄ちゃんが話してくれたこっちの車が走ってたの」

「じゃ、じゃあ偶然亮司さんのトラックに?」

ユキナは首を横に振り

「ユキナ何台も隠れていたよ。違う、違う、これじゃないって」

「じゃあ、判って止めたんだ?」

「うん、30分位隠れていたら、これだ!この車に乗らなくちゃだ!って思うのが来たの。急いで道路に出て手を振ったの。止まってくれて窓が開いたの」

「アハッ、亮司さんなんて言った?」

「おいおい、今度はお嬢ちゃんかい!まさかお嬢ちゃんもあっちの世界から来たってんじゃねえだろうなあって。だからユキナ、そうなのジロー兄ちゃんに会いに来たのって言ったの」

「ウハア、どんな顔したんだろう」

「目を真ん丸くして、一瞬ポカーンとしてたよ」

「だろうなあ」

「でも直ぐ、ガハハハッ、面白れえじゃねえか、ガハハッ面白れえ。よし、乗った乗った、って言って送ってくれたの」

「すごい勘だね、ユキナちゃん!」

「リョウジさんも驚いてたよ、どうして俺のトラックが判ったんだ?って。なんとなくって言ったら、じゃあ次の交差点どっちに曲がると思う?って聞いたの。ユキナが左でしょ?って言ったら、ちょっと気味悪そうにしたけど、またガハハハッ、面白れえじゃねえか、って笑ってたよ」

「で、左に曲がったの?」

「うん」

「すごいもんだなあ」

「じゃあ次はどっちだ?って何度もやったけど、ユキナ全部当てたよ。それからいろんな話しをしたり、食事も御馳走になっちゃった。それからユキナ寝ちゃったの。リョウジさん独りでブツブツ言ってたけど」

「なんて?」

「こんな子供がこんな手の混んだウソつくとは思えねえが、しかしこの話しは誰にも話せねえ、頭がおかしくなったと思われて仕事がこなくなっちまわあ、ううっ話せねえ。って言ってた」

「そりゃあ助かった。で、何処でトラックを降りたの?」

「都合のいい所で降ろしてって言ったんだけど、こんな夜中にインターみたいな所で女の子を降ろせる訳ねえだろうって言って、所沢の駅前まで送ってくれたの」

「エエッ、すぐ近くまで来てくれたんだ!僕とえらく待遇が違うなあ」

「もしジロー君と会えなかったらここに電話しろって紙に番号も書いてくれたよ」

「うん、亮司さん言葉とか荒っぽいけど、いい人だよね」

「リョウジさんが休憩の時ずっと見てた新聞のお馬さんの番号教えてあげたよ。これが一番、これが二番になると思うよって」

「そりゃあ喜んだろうなあ」

「そっ、それ、ほんとかユキナちゃん、ワオー大穴じゃねえか、面白れえじゃねえかワオーって叫んでた」

「そりゃあ凄いお礼になったなあ。じゃあ駅前からこのアパートも全然迷わずに来たんだ」

「うん、でもフォルテの声が聞こえて、ジロー兄ちゃんの顔見た時やっぱりホッとして、嬉しくって」

「ほんとによく来たよね。凄い。しかし村がそんな状況じゃ、急いでなんとかしなくちゃだけど、、、、」

「お父さんがね、ジローさんだってあちらの世界での生活があるんだから無理を言ってはいけないよって」

「うーーん、仕事はあと4日で始まるんだけど、、それより僕なんかが新種のベシに対抗出来るんだろうか、、、」

「お母さんはね、ジローさんに会えたら戻って来ない方が安全かもしれないよ、お願いして置いてもらいなさいって言ってたけど、ユキナやっぱりお爺ちゃんやお婆ちゃん心配だし友達も死んじゃったらやだし、、、」

「そりゃあ戻りたいよね、ウーーン」

ジローは腕を組み、窓から真っ暗な外をしばらく睨んでいたが

「よし!ユキナちゃん一緒に戻ろう!」

「ジロー兄ちゃん!」

「いいなフォルテ!」

「ミュ!」

 

第ニ部 第六章に続く


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